コンセプト

全体コンセプト

null²は「空即是色・色即是空」「いのちを磨く」という哲学を中心に据え、縄文・弥生以来、日本が持ち続けてきた「磨く」という美的感覚を現代的に再解釈したモニュメントである。国家や企業を超え、「芸術家がパビリオンを作る」こと自体が社会彫刻であり、21世紀万博における新しい風景を形成する試みとなっている。建築そのものが巨大な彫刻作品であり、素材から独自に設計した特殊な鏡膜やLED、ロボットなどのテクノロジーが融合している。

ミラールーム(言語的展示)

特注のLEDと鏡を駆使した巨大空間内で、観客はデジタルヒューマンと対話する。言語的なコミュニケーションを通じて、観客は「記号的表象を手放す」ことを経験する。人間がAIや計算機に記号を譲り渡した後に残る存在の本質を問いかけ、言葉を通じて自己や社会を再認識する。

ミラールーム(非言語的展示/インスタレーションモード)

無限に反射する光空間の中で人工生命やライフゲーム的な非言語的インスタレーションを提示する。表象が剥奪された状態で、生命の本質的構造とは何かを感覚的・直観的に体感できる空間となっている。無限に広がるデジタルの水面を通じて、自己と環境の境界が曖昧になり、新たな生命感覚を提示する。

外装のコンセプト

外装は周囲の景観をリアルタイムで反映・変形する特殊な伸縮性鏡膜で構成され、風景自体を生きた彫刻へと変換する。21世紀の新しい鏡として、常に変容し続ける都市景観の象徴的存在となる。

茶室

null²の茶室は、日本の伝統的な茶の精神や曼荼羅的空間の概念を取り入れている。建築全体が茶的な精神性と日本の美学に接続されており、それを計算機自然文明の文脈で再定義している。大阪という土地にちなみ、金茶室をモチーフとした金色のロボットアームが膜を動かし、伝統とテクノロジーが交差する象徴的展示となる。

ヌルヌル Pavilion Shop 展示

ヌルヌル Pavilion Shop 展示では、人間とテクノロジーの歴史的・対数的時間軸(ログオーダー)を提示し、蝶(荘子の胡蝶の夢)、鏡、剣、埴輪、浮世絵、能、複製芸術などの象徴的な表象を通じて、人類がどのように表現や記号と関わりを持ち続けてきたのかを示す。現代の芸術がこれら歴史的文脈にどのように位置付けられるかを問いかけ、観客に深い歴史的・哲学的省察を促す展示となる。